「私の今ここ」、秋の台所基地。

【4年前〜いま】前ブログ「ここ、古民家。」より

前回の記事はこちら ▶︎ ここ、古民家。#2020.9.28 ③

※この投稿は以前運営していたブログ「ここ、古民家。」より、過去の記事を投稿しています。

 台所仕事は、私が好きな家事の一つです。なぜ好きなのか、お話ししようと思います。

 私は独身の頃に画家活動を始めました。その活動は結婚後も、娘が一歳半になるまでは継続していました。現在は、娘との時間を大切に過ごすために、活動はお休みしています。画家活動というのはいわばライフワークなので、一定収入があるわけでもなく、全ての作品が、必ずしも収入に繋がるものではありません。経費や時給換算すればむしろマイナスです。それでも、自分の表現を探求し続ける事に価値があります。そんな私を理解してくれる家族はもとい、「ずっと絵を描いて欲しい。」と言ってくれた夫には、いつも恩を感じていました。だから、結婚したら家の事はしっかりやらなきゃ!という、何か義務感のようなものが始めはありました。家事は「好きか嫌いかではなく、やるもの。」でした。けれども、これは自分を苦しめる考え方でした。

 細かいことは割愛しますが、一時期ノイローゼのようになりました。これにはいろんなご感想をいただくと思いますが、私はもう二度と、自分を壊すような義務感は持たないように気をつけています。とっても、ちっぽけな私ですので。

 そんな私が突然、ぬか漬けを作りたい!と思い立ち、実際に作ってみたことをキッカケに、保存食にどハマり。今まで「やるもの」だった台所仕事が、「好きだから、やるもの。」になりました。ぬか漬け、塩漬け、高菜漬け、らっきょう漬け、梅干し、たくあん・・・どれも本当に夢中になりました。更に、お漬物を自分の育てた野菜で作ってみたくなりました。小さなお庭にプランターを置いて野菜を作り始めました。そのうちに「畑を持ちたい!」と思うようになり、とうとう畑付きの古民家に引っ越してしまいました。今思えば、娘を妊娠し、巣作り本能とやらが働いていたのかなとも思います。また、子供時代に母のお漬物作りやお花のお世話を手伝った経験が、あたたかな感情として今につながっているのかもしれません。とにかく、夢中になりました。

 画家活動に限界を感じ始めた産後一年以降、疲れやストレスを癒す場所がなくて困り果てていました。絵を描くためにはまとまった時間が必要ですが、育児中の私にそんな時間はありません。トイレにすら思うように行けないのですから。また、大作には集中力も要します。これまた寝ない子育児をしていたものですから、ひどい寝不足です。にっちもさっちもいかず、かえって焦りがつのりました。

 その点、台所仕事は育児との平行作業ができます。更に、五分あれば完結できるような工程もたくさんある。保存食作りはその最たるものです。ひた向きに手指を動かせば必ず報われるこの仕事が、私をご機嫌にしてくれます。

 いつしか私の基地は、アトリエから台所へと移りました。

 上の写真は、今住んでいる古民家の内見時の台所の様子。この古民家を選んだ決め手はたくさんあるのですが、この懐かしい雰囲気漂う台所がその一つです。

 これが現在の私の台所基地です。今日は朝から雨が降っていて、室内はこのように薄暗いのですが、懐かしい感じがしてとても好きです。庶民的な雰囲気が漂っている、私の理想の台所です。お庭の話でも同じことを綴りましたが、私は手入れしすぎない感じがとても好きです。例えるならば、「おふくろ」が煮物を炊いている、そんな感じです。そこにいるのは「ママ」でもなく、「お母さん」でもなく「おふくろ」でなければなりません。そのおふくろの作る料理も、インスタ映えしそうな色とりどりなものではなく、全体的に茶色い煮物です。「おふくろ」の手はしわしわで、エプロンではなく、割烹着を着ている。私の好きな台所は、そんな感じです。

 この古民家に出会った頃、水周りだけはリノベーションをして小洒落た感じにする事も考えましたが、やっぱりこの雰囲気は捨てがたく、元々あったシンクや吊り戸棚はとりあえずそのまま使うことにしました。今後、この台所は夫と二人でDIYリノベーションをする予定ですが、今の雰囲気を生かしたものにしたいと考えています。

 さて、前置きが長くなりましたが、今日の台所基地での一コマです。秋の栗しごと。ご近所の方から立派な栗をいただいたので、渋皮煮を作ってみました。まずは鬼皮剥き。子供の頃は草花や木の枝なんかでよく遊びましたが、その頃のワクワクする気持ちを思い出します。手指に草花が擦れる感触や、頬を撫ぜる夕暮れの冷たい風、心が清々しさで満たされる感覚、濁りのない、真っ直ぐな心。

 と、言葉にしてみるとゆったり感じられますが、実際はてんやわんやです。作業をしみじみ行う余裕はありません!一つ剥き、娘に歌を歌ってあげ、また一つ剥き、娘とかくれんぼ。煮こぼしながら、娘に絵本を読む。見たいと言われれば、抱っこしてお鍋の中を見せてやる。おままごとしたいと言われれば、一時中断する。写真からは伝わってこないかもしれませんが、とにかく常にてんやわんや!片手間にしかできません。それでもお料理は確実に出来上がっていくので、私にとっては本当に良い気分転換なのです。渋皮煮は初めて作りましたが、鬼皮剥きが楽しい!そして、お鍋がワイン色に染まる程のアクの多さにびっくりしました。これだけのアクを、煮こぼせば取り除けるということに気づいた人はなんて賢いんだろう。

 こうして手間ひまかけて出来上がった少しの食べ物を食べて、また別の何かに手間ひまかけて。そうやってずっと暮らしてきたのだなぁと、昔々の日本人の美しい暮らしを思うと、なんだか心がしんとなって癒されるようです。ごちそうさまでした。

 さぁ、明日は何をしようかな。子が元気で忙しい毎日に感謝をしつつ、自分の「今ここ」を見つけるために。

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